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podcast-tool 開発日記 #2 音を整える — 「出る」から「聴ける」へ

前回までのあらすじ

第1回では、podcast-tool最初のコミットが置かれた日——2025年7月11日を追った。朝に pyproject.toml だけの「箱」を用意し、その日の午後の26分で、CLIの骨格・設定ファイルの読み込み・VOICEVOX での音声合成・m4a 書き出しまでが一気に立ち上がった。「音が出た」最小形が、たった半時間でできあがっていた。

ただし「音が出る」と「聴ける」は別の話だ。合成音声をそのまま並べただけでは、速度はちぐはぐ、BGMはぶつ切り、セクションの切れ目もなく、音量ものっぺりしている。第2回は、その「とりあえず出た音」を 聴けるものに整えていく 数日間を、同じくコミット履歴から振り返る。

対象は、誕生当日の夜から翌々日の朝にかけて。コミットでいうと 458528f(話者速度調整)から e8aa46b(アウトロのフェードアウト改善)までの一塊、その締めとして翌朝の a6aa822 までだ。

まずは「話す速さ」から

最初に手が入ったのは、話者ごとの速度だった。

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458528f  2025-07-12 04:46  [feat] 話者の音声速度調整機能を追加

差分は speakers.jsonmain.py にまたがっている。話者定義のほうに速度のパラメータを持たせ、合成時にそれを効かせる、という素直な作りだ。前回見たとおり、このツールは初日から「ロジックではなくデータで振る舞いを決める」データ駆動の発想で組まれていた。速度調整も例外ではなく、話者ファイルにパラメータを足すだけで効く形で入っている。

地味だが、これは「聴きやすさ」の第一歩だ。早口すぎる話者、間延びする話者を、台本を書き換えずに speakers.json 側で揃えられるようになった。

BGMをループさせると、継ぎ目で「ブツッ」となる

その13分後、BGM の悩みに手が入る。

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b70b35e  2025-07-12 04:59  [feat] BGMループ時のクロスフェード処理を追加

短いBGMを長い本編に合わせて繰り返すと、ループの継ぎ目で波形が不連続になって「ブツッ」というノイズが乗る。これを避けるのが クロスフェード——前のループの終わりと次のループの頭を重ねて、なめらかに繋ぐ処理だ。main.py に44行が足され、bgm_config.json 側にも設定項目が増えている。BGMの扱いが「ただ流す」から「ちゃんと繋ぐ」に一段上がった瞬間だ。

いったん設定を config.json に逃がす

機能が増えてくると、設定があちこちに散らかってくる。30分ほど後、それを一度整理するリファクタリングが入る。

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1f84bc1  2025-07-12 05:32  [refactor] 設定情報をconfig.jsonに分離し、ロジックを改善

このコミットは config.json を新設しつつ、main.py+336 / −441 という大きめの差分で書き換えている。機能追加というより、増えてきた設定値とロジックをいったん棚卸しして整理する回だ。立ち上げ期の一枚岩に、最初の「片付け」が入ったとも言える。

「音楽は標準で入れるものじゃない」

このあたりで個人的にいちばん好きなコミットがこれだ。

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7c5d786  2025-07-12 05:33  [fix] 音楽は標準で入れるものじゃない

変更されているのは .gitignore の2行だけ。だがメッセージが効いている。BGMを「デフォルトで必ず混ぜるもの」として扱うのをやめた、という設計判断の表明だ。生成物にうっかりBGM前提のファイルを巻き込まないよう手当てしつつ、思想として「音楽はオプションであって前提ではない」へ舵を切っている。前回の「typer をやめて argparse にした話」と同じ匂いがする——華やかさより、地に足のついた素直さを選ぶ。

直後には開発まわりの整備も続く。

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6c7071d  2025-07-12 05:41  [chore] ruffを導入し、import順を自動整形
2784e24  2025-07-12 05:43  [docs] READMEを現状に合わせて更新
9778b6c  2025-07-12 06:22  [feat] M4A出力とffmpeg/ffprobeパスチェック機能を追加し、READMEを更新

ruff を入れてコード整形を自動化し、README を現状に追従させ、ffmpeg/ffprobe のパス存在チェックを足す。動く機能だけでなく、動かす前のチェックと開発体験にも目が向き始めている。

「無音」を足すと、急に聴きやすくなる

日付が変わって(JST では同じ7月12日の昼)、いよいよ「整音」の本丸に入る。

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7a9d3b7  2025-07-12 09:18  [fix] インデントエラーを修正し、BGMなしの場合に無音トラックを生成
55f5b54  2025-07-12 12:24  [feat] 各セクションの切れ目に1秒間の無音を追加

7a9d3b7 は、BGMが無いときでも 無音トラックを生成する ようにした修正。BGMありき前提だった処理を、「無くても破綻しない」形に直している。前項の「音楽は前提ではない」という思想が、ここで実装として効いてくる。

そして 55f5b54各セクションの切れ目に1秒の無音を入れる。差分はたった7行だが、効果は大きい。話題が切り替わるところに息継ぎの間ができ、立て続けに喋り続ける機械音声の窮屈さが一気に和らぐ。「聴ける」に近づく改良の中でも、コスパが抜群に良い一手だ。

BGMに「メリハリ」をつける

無音の次は、BGMの音量に表情をつけていく。

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c939d1c  2025-07-12 12:32  [feat] BGMのセクション開始・終了時の音量調整機能を追加
2d3e6ee  2025-07-12 13:22  [refactor] 進捗表示の削除とコードのクリーンアップ
ac704b8  2025-07-12 14:15  [feat] BGMの動的な音量調整機能を追加
e8aa46b  2025-07-12 14:22  [fix] アウトロのフェードアウトを改善

c939d1c は、セクションの開始・終了でBGMの音量を上げ下げできるようにした機能。導入部はBGMをやや前に出し、本編はそっと下げる——そういう演出が bgm_config.json で指定できるようになった。

ac704b8 の「動的な音量調整」は、この期間でもっとも実装が膨らんだ回で、main.py+74 / −51 書き換えている。固定の音量ではなく、本編の進行に合わせてBGMの音量を動かす仕組みだ。喋りに被りそうなところは自動で下げる、いわゆるダッキングに通じる発想と言っていい。

締めの e8aa46b は、アウトロのフェードアウトの改善。曲をブツッと切らず、終わりに向けてすっと音を引いていく。番組の「終わり方」を整える、最後のひと手間だ。

ここまでの一連の改良で、BGMは「鳴っているだけ」から「間と音量で番組を支える」存在に変わった。

整えたら、もう一度ロジックを整える

そして翌朝、この「整音」期間の締めくくりに、もう一度コードそのものを整える回が来る。

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a6aa822  2025-07-13 06:17  [refactor] main.pyの音声処理ロジックを改善し、デバッグメッセージを追加

機能追加が一段落したところで、音声処理まわりのロジックを見直し、デバッグメッセージを足す。次に進む前に足元を固める、という呼吸だ。第1回の295行・一枚岩の main.py は、この数日でだいぶ機能を抱えこんだ。やがて来る本格的なファイル分割(config_utils.py / voice.py / mixer.py への切り出し)は、もう数日先の話になる。

この期間でできたこと

整理すると、この「音を整える」数日間で入ったのはこのあたりだ。

機能コミット
話者ごとの速度調整458528f
BGMループのクロスフェードb70b35e
設定の config.json 分離1f84bc1
BGMを「前提」から「オプション」へ7c5d786 / 7a9d3b7
セクション間の1秒無音55f5b54
セクション開始・終了の音量調整c939d1c
BGMの動的音量調整ac704b8
アウトロのフェードアウト改善e8aa46b

派手な新機能は無い。だが「機械が喋ってる」感を削り、「番組を聴いている」感を足す改良が、密に積まれた数日だった。速度・間・音量——人が無意識に心地よさを感じる要素を、一つずつ手で詰めていった期間だと言える。

次回予告

第3回は、増えすぎた main.pyメスを入れる回を予定している。設定読み込みを config_utils.py へ、VOICEVOX 通信を voice.py へ、BGM・オーディオ処理を mixer.py へ——一枚岩を機能ごとに切り分けていく、最初の本格リファクタリングだ。あわせて、pytest を入れてテストを書き始め、GitHub Actions に載せるまでの「壊れていないことを確かめる仕組み」づくりも追っていく。


この記事は podcast-tool のコミット履歴を一次資料として書いています。引用したコミットハッシュ・時刻・コード構成は当時のリポジトリ状態に基づきます(時刻は JST 表記)。

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